それでもキミをあきらめない
大学生になった兄は、荒れていたころとは打って変わって外面がいい。
妹の目から見ればいたって普通の顔立ちだけど、外に出るとどういうわけか整っているように見えるらしく、街中でよく女の子に声をかけられる。
そんな兄をはっきりと切り捨てるキリカさんを見てると、なんだか胸がすいた。
「て、いうか、あの、いったい何を」
「目、つぶって」
「は、はい」
言われた通りに視界を閉じたとたん、ざり、と間近に音が響き、驚いて目を開ける。
「動かないで」
強い口調におそるおそる目を上げると、キリカさんはひどく小ぶりなハサミをわたしに向けていた。
「ごめんね、でも今、眉を整えてるから」
「え……」
ハサミが触れる冷たい感触に、もう一度目をつぶる。