それでもキミをあきらめない
「実際、焦っちゃうよね。同じ年の子はみんな専門行って知識を身につけてるのに、あたしは何やってんだろって。時間の無駄だよって」
「大学って……時間の無駄なの?」
目を開けると、キリカさんはにっこり微笑んだ。
「無駄だと思ってたんだけど、親のせいにして自分で時間を止めるなんて、もったいないじゃない」
「時間を止める?」
教室のコンセントにつないだコテでわたしの黒髪を挟みながら、彼女は歌うように言った。
「大学に通いながらでも、自分のできることをやろうと思ったの。独学でも勉強して、練習して」
「いい素材がいるって、俺がお前を紹介してやったんだよ」
得意そうに言って、翔馬はトレーのパスタを手にとった。
「これ食っていい?」と、返事をする前に勝手に開けてしまう。
「ぐえっ、まずっ」
むせている兄を無視し、キリカさんは細い眉を下げた。