月から来たんです。
恋の賞味期限
さむくないの…?
…………

 彼女と初めて交わした言葉はありきたりなものだった。



かしゃん…

アパートの真ん前にある在り来たりな広場にポール一本のバスケットゴールとオレンジや赤、青に変わるオバケ街灯が一つ。

規則正しい順序で変わっていく下で一人で地味にシュートを繰り返していた。

バスケットをする仲間もいなければ、大学に行っていた頃も、もっと遡れば高校だって帰宅部だった。
考えてみればバスケットとは然程に執着する理由はなかったかもしれない。

ただ、偶々貰ったボールとここ。広場。

バスケットボールを抱えたまま、僕は振り向いた。




 緑色のフェンス越しに淡いピンクニットワンピース。

ミュールのサンダルを履いた飴色の腰まで長い癖のない髪が風に緩やかに揺れている女の子。

年は僕より上だろうか、月明かりのせいでキレイに見えた。

瞳は睫毛やメイクで分かりにくいけど、大きく見えた。
僕はグレーのトレーナーのフードを脱いでかるく会釈した。
なぜ、会釈したのかは意味はない。何となく、相づちみたいなもんだ。

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