初恋の絵本
「心実!」
後ろからハルに呼び止められた。
朝練なのか、体育着姿だった。
形のいい眉を吊り上げ、
鋭く私を睨む。
「ハル……おはよう」
「なんで青山と一緒なんだよ」
「えっ?」
昨日あんなに彰吾と、
仲良かったのに……。
なんで、そんな怖い顔してるの?
「何度も言っただろ?それなのに、なんで青山と一緒にいるんだよ!試合前の俺に対する嫌がらせか?お前らのせいでコンディションまじ最悪なんだけど!」
「その程度でコンディション崩れるなら、お前サッカー向いてねえよ。やめたら?」
「青山ぁ!」
呆れ顔の彰吾が、ハルを挑発する。
どうして?
昨日まであんな打ち解けてたのに。
なんでそんな険悪になるの?
「行こうぜ、心実。こんなヤツ、相手にするだけ時間の無駄だ」
「彰吾………」
「待てよ!」
「……ハル」
彰吾とハル。
どっちを優先にしたらいいか、
分からなくなる。
「心実!俺と青山どっちか選べ‼︎」
大声を出すハルに、
登校してきた生徒が注目する。
「ハル、前に言ってたよね。彰吾のこと、好きでいていいって」
「そんなん言ってねえし!」
「言ったよ!昨日だって、夕方彰吾とハンバーグ食べたじゃないっ!」
「知らねえよ!つか、練習来ないと思ったら、青山と一緒にいたのかよ!信じらんねえ……」
ハルの瞳に怒りが映る。
「……そうだよな……俺が頼んで付き合ってもらってるんだよな…。なら、黙って見ろってか、そうゆうことかよ……」
「ハル!違うっ!」
「違わない!バカにするのもいい加減にしろよっ!」
拳を握り締め震えいるハルと。
顔色一つ変えずに涼しい表情の彰吾。
対照的な二人を交互に見つめる。