初恋の絵本




電車のドアが開き、
乗り込む彰吾について行く。




「どういうこと?ハルなら、さっき学校にいたじゃない」

「……なんで分かんねえんだよ。そろそろ気付いてやれよ」

「……なにいってるの?」

「あいつさあ。お前に気づいて欲しくてさ、たくさんヒント出してたじゃねえか」

「ヒント?」

「なんで傍にいるお前が気づかなくて、どうして俺が答えを教えなきゃならねえんだよ!」

「………?」

「あー……もう。何やってんだろう。俺」




ゆっくりと車窓からの景色が変わる。


いつくかの駅を通り過ぎて、
ようやく電車を降りた。



そこは知らない駅で。

来たことのない街だった。







「……ここ、どこ?」

「北山町。北校のある場所だ」

「北校、って、彰吾が受けようとしてたところ?」

「お前みたいなバカには程遠い場所だな」

「ひどい!」

「まあ。そんなバカ追いかけて西校を、選んだ俺が、一番バカなんだけどな」







成績優秀だった彰吾。

高校なんてどこも同じだろって、
結局私と同じ西校に入学した彰吾。





あれは、私と一緒に通うためだったんだ。







< 109 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop