初恋の絵本
電車のドアが開き、
乗り込む彰吾について行く。
「どういうこと?ハルなら、さっき学校にいたじゃない」
「……なんで分かんねえんだよ。そろそろ気付いてやれよ」
「……なにいってるの?」
「あいつさあ。お前に気づいて欲しくてさ、たくさんヒント出してたじゃねえか」
「ヒント?」
「なんで傍にいるお前が気づかなくて、どうして俺が答えを教えなきゃならねえんだよ!」
「………?」
「あー……もう。何やってんだろう。俺」
ゆっくりと車窓からの景色が変わる。
いつくかの駅を通り過ぎて、
ようやく電車を降りた。
そこは知らない駅で。
来たことのない街だった。
「……ここ、どこ?」
「北山町。北校のある場所だ」
「北校、って、彰吾が受けようとしてたところ?」
「お前みたいなバカには程遠い場所だな」
「ひどい!」
「まあ。そんなバカ追いかけて西校を、選んだ俺が、一番バカなんだけどな」
成績優秀だった彰吾。
高校なんてどこも同じだろって、
結局私と同じ西校に入学した彰吾。
あれは、私と一緒に通うためだったんだ。