初恋の絵本
「いっぱいできたね」
皮に餡を入れ終わった餃子が、
ズラッとお皿に並ぶ。
「誰がこんなに食べるんだよ」
「彰吾」
「食えるワケねえだろ!」
「冷凍すればいいんだよ。焼いてもいいし、スープに入れたら水餃子になるし」
「それにしても大量すぎるだろ…」
「ないよりいいじゃん」
「お前なあ」
とりあえず、
夕飯は餃子オンリーで
彰吾と死ぬほど食べまくった。
「美味しいね」
「まあな」
テレビを見ながら
彰吾と夕飯を食べる。
小さいテーブルは、
彰吾と私だけで満員だ。
「そう言えばさ」
「なんだ」
「涼香さんとはどうなったの?」
「は?涼香?」
涼香さんは、彰吾の彼女だ。
一度だけ街で会ったことがあった。
彰吾より、
かなり年上だった気がする。
「涼香っていつの話してんだ」
「三ヶ月前かな」
「もうとっくに別れてるぞ」
「え?じゃあ今は?」
「別の彼女がいる」
「ええ?じゃあ涼香さんは?」
「そんな前の前の女のコトなんか、知らん」
「………前の前て」
「涼香と今カノの間に一人いる」
相変わらずだなあ。
中学の頃と同じだ。
彰吾は、告白してきた女の子と
片っ端から付き合っていた。
高校に入学したら、
少しは落ち着くかと思ってたのに。