初恋の絵本
「それって好きなの?」
「なにが?」
「彼女を」
「好きだけど?」
「…………なんか、違う気がする」
「そういうお前はどうなんだよ」
「私?」
「高校入って、もう二ヶ月だろ?なんもないのかよ」
「なんもって?」
「恋愛系の話」
「ないね」
「淋しすぎるだろ。彼氏くらい作れよ」
ニヤニヤと、
彰吾らしい意地の悪い笑みを浮かべる。
「彼氏彼氏言うけどさあ」
「ああ?」
「彼氏作ったら世界が変わる?」
恋愛恋愛。
高校生になったら、
その話題ばかりになった。
「それは今より、とても楽しい?」
女の子は恋をすると変わる。
綺麗になる。
見飽きた雑誌や広告の言葉。
「誰かを好きになったら、素敵?」
次々と彰吾に言葉を投げると、
全部シカトされた。
気まずい顔して、
黙々と箸を動かす。