初恋の絵本





「ちょ……。はあああぁ⁉︎⁉︎」

「どうしたの?妃ちゃん」

「あ、あれ!あいつの、琥珀が着てるTシャツ。あれ、心実のじゃない?」

「え?」




あまり視力のよくない私には、
さすがに柄までは見えない。





「妃。どしたん?」

「ちょっと見てよ!琥珀の着てるTシャツって心実のじゃない?」

「あー!ほんとだ!あれ、私がカットしたんだもん。言い逃れできないし!」

「まさかとは思ったけど、分かりやすいことするねー!バカだわ!」

「あのクソガキ…。絶対取り返す!」

「私も!もう頭にきたー!」

「あ、待って…!」





教室を、出て行った妃ちゃん達の後を
慌てて追いかける。






裾と袖をザクザク切ったTシャツは。

琥珀ちゃんのサイズに会わなかったらしく、変形していた。

無理矢理着たんだろうな。





返してもらっても、
もうあれじゃ、着られない……。

私の体のラインに合わせて、
作ったやつだし。

自分では、同じのを作ることはできない。





………琥珀ちゃん。

ひどい。

ひどいよ………。








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