初恋の絵本




「あー!こんにちは〜。心実さ〜ん。どうしたんですかぁ?お友達いっぱい連れて〜〜!」

「それ。今すぐ脱いで」

「はあ〜?脱げって何をですかぁ?」

「Tシャツ。それ、私のでしょ」

「自意識過剰〜!違いますよぉ。これは、琥珀のですよぉ♪琥珀が自分で買ったんですよぉ!」

「バーカ。そのTシャツバラ売りしてねえし。業者に言わないと買えねえんだわ」




掴みかかる勢いで、
みんなが琥珀ちゃんを囲んだ。





「は、はあ⁉︎違うもんっ!琥珀が買ったの‼︎」

「ああ⁉︎タグ見せてみろよ!」

「これはねえ!うちらのグループみんなで買ったTシャツなんだよ。だから、みんな持ってるの。心実だけが持ってるのかと思った?」

「つか、くっさ!香水臭い!」

「……あんたさあ、香水のつけ方も知らないの?」

「もうバレバレだけど、香水も心実のだよね」

「だ・か・ら!琥珀は盗んでないもん!あ。そうそう!思い出したあ☆Tシャツも香水も、心実さんからもらったんですぅ♪」













「いい加減にして!」



琥珀ちゃんの態度に発言に
限界だった。




「……返して」




どうして嘘つくの?

なんで私のものばかり欲しがるの?

一体、何が目的?




聞きたいこと、
問い詰めたいことがたくさん。





だけも、一分一秒でも、長く。
そのTシャツを着て欲しくなかった。








私の剣幕に押されたのか、
琥珀ちゃんがTシャツを脱ごうとした。



無理矢理着てたのと、
慌てて脱ごうとしたのか。

嫌な音を立てて、
破れてしまった。

これはどう見ても修復不可能。







「………っ、……」





熱い息とともに、
苦しい涙が溢れる。


悔しい。許せない。


黙ってなく私の肩に、
妃ちゃんが手を置いた。





「心実、いいよ。Tシャツ、新しく作ろ」

「……、ふ………、ごめ…」

「なんで心実が謝るの?大丈夫だよ。むしろ、あんなヤツが着たのなんて、嫌だよね」













「ねえ。ハル読んでこようか?」

「いいよ。ハルがいたって、また琥珀を庇うだけだよ」

「あー。そうだよね。彼女がここまでされてるのに、どうなん?」

「もう別れたら?ウチらから言おうか?心実はあんたのせいでストーカーに嫌がらせされてますって」

「心実が別れたいっていったらいいんじゃない?」




Tシャツを盗まれたことが。

破ららたことがショックで。



涙が止まらない。




そのまま、妃ちゃん達と教室に戻る。









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