初恋の絵本


「あれ?心実?二人で何してるの?」

「晴太……。この人、友達?」

「ああ。晴太。その、なんだ……。青山彰吾くんについて色々とだな」

「え?彰くんのこと?彰くんならさっきまで俺とLINEしてたよ?」

「なんだってー!そのLINEのグループに俺も入れてくれ!今すぐっ!」

「ええ?京介さん彰くんと知り合いなの?」

「全然。だから知り合いになれるように何とかお前、紹介しろよ」

「ええ。彰くんそんなことして怒んないかなあ」





京介と呼ばれた男子に携帯を奪われた晴太は、
気にすることもなく私の方を見た。





「心実。どうしたの?これから行こうと思ってたのに」

「うん……。ほら。私。晴太の番号知らないじゃん?だから、本当に会えるか不安になって…」

「何度か会ってたのに?」

「……ん」



いろんな感情を殺して、
晴太を見上げた。




「そっか、それもそうだよね。俺がハルって思い込ませてたんだし」

「……晴太」

「今、携帯ある?番号交換し……あっ」




自分の携帯が奪われていたことを、
ようやく晴太が気がついた。






「京介さんっ!携帯返して」

「やだ。今彰くんとLINEしてんだよ!」

「何で勝手にやってんだよ!」

「彰くん、優しいよな。お腹痛い死にそう助けてってLINEしたら今から来るってさ。てなわけで、晴太。今すぐ腹痛になれ!!」

「できるわけないでしょ!つうか、なにサラリと凄い嘘ついてんの?今からって、ええー!彰くん今日忙しいって…」

「忙しいって、なんなんだよ?」

「彰くんは高校行きながら、将来のためにお父さんの仕事を手伝ってんだよ」

「へえ。お前と同じじゃん」





晴太。

お父さんのお仕事、手伝ってるんだ。

彰吾と同じ。


















……あれ?…あれ?……



お父さん………




誰……お父さんって…………






晴太がもし、私の兄なら……



晴太のお父さんって………








………私の………私……の……







……………お父さん?











痛い痛い。

頭が痛い。








< 126 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop