初恋の絵本
「あれ?心実?二人で何してるの?」
「晴太……。この人、友達?」
「ああ。晴太。その、なんだ……。青山彰吾くんについて色々とだな」
「え?彰くんのこと?彰くんならさっきまで俺とLINEしてたよ?」
「なんだってー!そのLINEのグループに俺も入れてくれ!今すぐっ!」
「ええ?京介さん彰くんと知り合いなの?」
「全然。だから知り合いになれるように何とかお前、紹介しろよ」
「ええ。彰くんそんなことして怒んないかなあ」
京介と呼ばれた男子に携帯を奪われた晴太は、
気にすることもなく私の方を見た。
「心実。どうしたの?これから行こうと思ってたのに」
「うん……。ほら。私。晴太の番号知らないじゃん?だから、本当に会えるか不安になって…」
「何度か会ってたのに?」
「……ん」
いろんな感情を殺して、
晴太を見上げた。
「そっか、それもそうだよね。俺がハルって思い込ませてたんだし」
「……晴太」
「今、携帯ある?番号交換し……あっ」
自分の携帯が奪われていたことを、
ようやく晴太が気がついた。
「京介さんっ!携帯返して」
「やだ。今彰くんとLINEしてんだよ!」
「何で勝手にやってんだよ!」
「彰くん、優しいよな。お腹痛い死にそう助けてってLINEしたら今から来るってさ。てなわけで、晴太。今すぐ腹痛になれ!!」
「できるわけないでしょ!つうか、なにサラリと凄い嘘ついてんの?今からって、ええー!彰くん今日忙しいって…」
「忙しいって、なんなんだよ?」
「彰くんは高校行きながら、将来のためにお父さんの仕事を手伝ってんだよ」
「へえ。お前と同じじゃん」
晴太。
お父さんのお仕事、手伝ってるんだ。
彰吾と同じ。
……あれ?…あれ?……
お父さん………
誰……お父さんって…………
晴太がもし、私の兄なら……
晴太のお父さんって………
………私の………私……の……
……………お父さん?
痛い痛い。
頭が痛い。