初恋の絵本
「彰吾、……本当に帰るの?」
「ああ。やり残した仕事があるんだ」
「そうなんだ……」
学校での出来事とか
思い出すと憂鬱になる。
ストーカーとか。
盗難とか。
彼女とか。
彰吾といた時は、そんなんで
悩むことなんてなかったのに。
楽しかった数ヶ月前がとても懐かしい。
「またなんか有ったのか?」
「うん…」
勘のいい彰吾が、
私の声のトーンで察してくれる。
「そんな顔するな。……お前はもう俺と関わらないって」
「…そんなの、や……」
「これからは俺じゃなくて、晴太を頼れ。くれぐれもハルに頼るなよ?どうせ、お前が落ち込んでんのもハル絡みなんだろうが」
「彰吾……」
「心実……らしくないぞ」
私の掴んでいた腕を彰吾は払い、
ポンポンと私の頭を優しく撫でた。
それだけすると、背を向けて
バイクの方へと向かった彰吾。
離れていく距離が寂しい。
今日あったことを話したい。
前みたいに軽口を言って欲しい。
励まして欲しい。
一緒にいて欲しい。
「晴太」
「ん?」
「私、彰吾とまた……一緒にいたい。前みたいに…。なんでも一緒にやりたい。そう思うのって、ダメなのかな?」
彰吾と一緒にいたい。
ただそれだけ。
でも、そんなのワガママだよね。
ごめんね、彰吾。
「優しい人はね、強いから、大丈夫」
晴太がそういった。