初恋の絵本
「篠原晴太。 これが俺の本名。
今は、篠原でも晴川でもないけど」
篠原晴太。
あの母子手帳にあった名前。
「つまり、私と晴太は実のキョウダイ?」
自分でも驚いた。
衝撃的な事実を述べられているのに、
なぜか落ち着いている。
「じゃあ、なんで?晴太はハルに似てるの?」
「それはね。
最初。俺らの父さんと母さんは婚約してたんだよ。
そこにハルの母親が現れたんだ。
父さんも酷いよね。母さんと婚約してるのに、別の女と付き合うなんて。
でも、母さんは耐えた。お父さんのことが好きだったから。
けど、それは、ハルの母親も同じだったんだ。
それから、しばらくして。
ハルの母親が妊娠したんだ。
妊娠したから、別れてくれって。婚約を解消してくれって。
子供ができたから仕方ないって。
お腹の子に罪はないって。
あんなに好きだったのに。
父さんと別れたんだ。
………別れなきゃよかったのに。
気づくのが遅かったんだ。
母さん。俺たちを妊娠してるのに気付かなくて……。
それから、母さんは父さんの前から姿を消して、俺たちを産んだ」
「……お父さんに、言わなかったの?」
「言わなかった。
もう、ハルの母親と結婚してたから。
父さんも、母さんが妊娠してることを知って、追いかけたんだ。
けど、ハルの母親がそれを許さなかった。
ハルの母親はなんだか危ない人だったらしい。
それから、俺たちが産まれた。
そのより一月前にハルは産まれていた。
それで、母さんはハルの母親を恐れて。
というか、殺されても過言じゃないと思ってて、知り合いのおじさんに俺を預けたんだ。
だから、俺たちは会うこともなく、育てられてきたってわけ……」