初恋の絵本



「そんな……」


晴太の頬が濡れていた。

私の頬も濡れていた。




「俺ね、このこの知ったの、結構最近なんだ。


育て親のおじさんが亡くなる直前に
おじさんから聞いた。


実は前に会ってたことも。


母さんの葬式。って知らないで行ったんだよ。俺。


そしたら、女の子が泣いてた。それが、妹だったなんて。ついこないだ分かったんだ。


だからかな?会いたかったんだ。妹に。


でも、名前も住んでるとこも何もかも分からなかった。


でも、見つけた」




そう、悲しそうに笑ってる。晴太。





ねえ。お母さん。


なんで、行ってくれなかったの。


こんな大事なこと。








バカだな。晴太は。

傷つくまで自分を作らなくていいのに。





私もバカだ。


そんなことも知らずにのうのうと
過ごしてきたんだから。


全部晴太に背負わせてきてたんだ。






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