初恋の絵本




ーーピンポーン



静まり返っていた部屋に
突然インターフォンの音が響いた。


それから、荒々しく玄関を叩く音。






「誰?」

「………心実。君は奥にいて」

「晴太?」



私を残して、晴太が玄関のドアを開けた。




「あなた?あなたいないの?」

「……父さんはいません」

「あんたは……」

「お久しぶりです…晴太です」

「なんで、お前がここにいる⁉︎出てけ!ここから出てけ!」



がシャンっと、玄関から何かが割れる音がした。




「晴太!」




慌てて戸を開けると。

たくさんのガラスの破片と、

足から血を流した晴太がいた。






「……心実……」

「晴太…」

「くるな……。この人、正気じゃない……」



この人。ああ、この女の人。




「心実?あんたが心実?」


女の人が聞いてきた。



「そ、そうですけど……」

「あははははー!なに?二人揃ってなにをするつもり⁉︎仕返しでもするつもりなの?あははははー笑わせてくれるわ」




そう言って、しゃがみ込んでいる
晴太に近づく女の人。

ヤバい!このままじゃ
晴太が殴られるっ!!





「止めてください!晴太が死んじゃう!」

「うるさい!離せっ!お前らがいるせいでぇ!」

「ぎゃ⁉︎」



指輪が沢山付いた拳で、
私の頬を殴った。

痛い。ものすごく痛い。






「ははは、あははは!ザマーミロ人のものを盗むからそんなるんだよ!」




私に馬乗りになって、殴ろうとする女の人。


お酒臭い……この人、酔ってる。





「別に何も企んでなんてないっ!ただ、妹と会ってただけだ!!それに、母さんは死んだよ!」




晴太の絶叫に、
ピタリと女の人の手が止まった。





「あの女が死んだ?」

「そうだよ。知らせてないけど、……今から10年くらい前にはな……あんたの望み通りに、死んだよ。これで満足かよ……」




そうか。

この人、ハルのお母さんだ。







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