初恋の絵本
さようなら




月曜日。

学校を休むか休まないか
ギリギリまで考えていた。



顔の腫れは大分治ったけど、
アザは消えなかった。


ファンデーションとコンシーラーを使って、なんとか目立たなくさせる。









……ハルに、会いたくないな。









昨日全部わかってしまった。

私、晴太、そしてハルの関係。

双子の過去。

ハルのお母さんのこと。





知ってしまったら
なんだか顔を合わせにくい。



何も知らないハルを見て、
私は普通でいられるかな?


















「心実。珍しいね。お化粧して学校来るなんて」

「あはは。たまにはね」


よかった、怪我のこと、
バレてないみたい。





「妃ちゃん」

「んー?」

「私、今日。ハルに別れるって言うよ」




騒がしい、朝の教室に。

似つかわしくない、別れ話。






「……そっか。ついに決めたんだ」

「うん。こんな気持ちのまま続いても仕方ないし」






そうさせる。

心の中で宣言させた。






「ねえ。ちょっと大ニュース!!」





妃ちゃんと茉桜ちゃんと話していると、
隣のクラスの女子が教室から飛び込んできた。




「あ、妃!篠原さん!」

「どうしたの?すごい汗…」


鞄の中からミストを取り出して、
女の子に渡そうとしたら……。



「今、職員室で聞いたんだけど。ハル、入院してるんだって!知ってた?」

「ハルが入院⁉︎」



思わず手からミストが落ちた。




「入院って、どこか悪いの?病気?」

「病気じゃないらしいよ。足の怪我みたい………」





足。

足を怪我って……。




脳裏に
ハルと同じ顔をした晴太が。

足を怪我して呻いてるのが
フラッシュバックする。





「……ハル」



怪我の原因は知らないけど。

見てないのに、
晴太の姿とハルが重なる。






まさかまさか。


晴太はハルのお母さんのせいで怪我したんだ。




ハルの怪我とか、別だ。













落ち着かないままの授業なんて無意味。



嫌な胸騒ぎがして、
勉強どころではない。



お昼休みになっても
私は憂鬱で、
コーヒーだけ持って屋上に来た。




どうして、私。こんなに不安なんだろう。







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