初恋の絵本


どんな顔だった?

どんな声だった?

曖昧すぎて、よく覚えてない。



だけど、
感情や感覚は忘れなれない。



きっと、これが私の初恋なんだ。



「……ハル」



名前だけ、いつもなぞる。

そして全部思い出せなくて
切なくなる。



呟いたって、
小さい頃の記憶はそのまんま。

これ以上思い出せないし、
これ以上忘れなれない。



「ハルが好き」



自動的に呟いた。

数学みたいに。



この計算の答え。



私は、『ハル』が好き。



虚をつかれたように、
切れ目の目を大きく見開いている彰吾。

そんな顔をしてると、
ちゃんと私と同じ15歳に見えるね。



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