初恋の絵本
ーーーコンコン。
意を決して、病室のドアをノックした。
「はい」と、ハルの声が部屋の中から
聞こえた。
それを合図に、彰吾が病室の扉を開く。
「………青山⁉︎……心実……」
「よお」
「……ハル……」
なにもかもが白中に、ハルはいた。
「お前ら……なんで……」
「えと。ハルが入院したって聞いたから。突然押しかけて、ゴメンね……」
「……いや」
「で。お前なんで入院してんの?見かけたところ元気そうだけど」
「うん。そうだね。思ったより元気…」
「元気じゃねーよ、よくねーよ!」
傍のグラスを思いっきり床に投げつけたハルは、私たちをすごい目で睨みつけた。
投げ捨てられたガラスは、
ばらばらに割れてしまった。
「てめえ!危ねえじゃねえか!心実に当たったらどうするんだ⁉︎」
「うっせーよ!口止めしたのに、なんでここが分かった⁉︎つか、そんだけ知ってれば俺の怪我のことだって本当は知ってんだろ⁉︎」
「怪我?なんのこと?」
「とぼけんなよ。サッカーできなくなった俺を笑いに来たんだろ?」
サッカーが出来ない?
どうゆうこと?
「……サッカーが出来ないって……、
何があったの?」
「………」
「……ハル?」
勢いに任せて口から出たのだろうか。
バツが悪そうに、
そのままハルは口を閉ざしてしまった。
「俺がいない方が良さ気だな」
「彰吾?」
「ちょっと出てくるわ。そういや手ぶらだったな。売店行ってくるけど、晴川、欲しいものあるか?」
「いらねーよ!そのまま帰れ!」
「あー、分かった分かった。じゃあな、心実。なんかあったら電話しろよ」
「……うん」
後手でバイバイのジェスチャーをして、
彰吾は病室なら出て行ってしまった。
「……………」
「……………」
重たい空気が続く。
そんな中、ハルが沈黙を破った。
「……なあ。母さん見なかった?」
「え?」
ポツリと呟いたハルの言葉に戸惑う。
だって。
ハルのお母さんは………。