初恋の絵本
「あっ、そろそろ時間だ!」
一緒に子供じみてるけど、
砂のお城を作ってると
晴太が急に言い出した。
そうすると浜辺を向け出した。
「俺、そろそろ行かないと……」
「どこ行くの?」
「駅だよ」
「……晴太……私……」
嫌だ。
私の視界から晴太が消えてしまう。
「晴太……私も連れてってよ……」
泣きながら腕にひっつく私。
「………心実には待ってくれる人がいるよ。だけど、俺にはいないから」
言っている意味が分かんない。
「分かんないよ……」
そうすると私の肩を持ち、
目を見つめて口にする晴太。
「君には戻れる場所がたくさんある」
ううん。ないよ。分かんない。
「だから、帰ろう」
それなのに、君は私に帰れと言う。
「晴太は……?晴太には帰る場所があるの?」
「ないよ。帰る権利もない」
「どうして?」
「俺は願ったことがあるから」
「あの人、死んでしまえばいいのにって」
波の音がうるさい。
「そんなの、誰だって思うよ。人間だもん。嫌なことがあったらおもっちゃうもんだよ」
声が掠れる。
喉が痛い。
気がつけば、泣いている。
なんだか予感はしてた。
涙が止まらない。
止められない。
「現実にそれが起きてしまった!俺の願いが叶っちゃった。すごくすごく後悔したけど。起きてしまったこと、思ってしまった事実は絶対になかったことなはできないんだ」
そんなの晴太のせいじゃないよ。
あれは晴太のせいじゃない。
絶対違うのに。
おかしい。
「それに!俺さえ現れなければ、彰くんともハルとも幸せだった!!」
「そんなことないっ!私の好きだったハルはあなただった!私はお兄ちゃんに恋してた!!」
「違うっ!そんなの恋じゃないよ!…」
二人して、大声出して。
「ごめん、大声だして」
「ううん。こっちこそ…」
それよりさ。
晴太。今、恋じゃないって言ったよね?
じゃあ、なんなのさ……。
恋ってなに?
「じゃあ、恋ってなに?本当の恋ってなに?」
あ、私の声が海辺に響く。
なんか低い声。
私の中にこんな低い声存在してたんだ。
「前にね、彰吾にも言われた。
小学校の時のなんて恋じゃない。
アイドルや芸能人の好きも恋じゃない。
じゃあさ、本当の恋ってなに?
私にはそんな恋できない!」
「多分だけど…確かに俺に対してや
ハルに対しては。
恋じゃないって言ったら嘘かもしれないけど、
君にはちゃんと恋として、愛としてす
好きな人がいるはずだよ」
恋として。
愛として。………か。
なにそれ。そんなの。
知らない。