初恋の絵本
その後、無言のまま
駅に向かって歩いた。
何一つ言わずに……。
気付いたら駅の改札まで来ていた。
「じゃあ、ここで」
「…待って………」
「君は来ちゃ行けないよ」
とんと、肩を押される。
虚をつかれよろめいた隙に、
晴太が改札を抜けてしまった。
「さよなら」
暗い駅の構内に、
晴太の体が吸い込まれ消えた。
追いかけたいけど、
私には切符がない。
ここを通る資格がない。
時間がどんどん過ぎていく。
もう、電車は行ってしまったかな?
「心実!」
ドキっとした。
背中にバイクのエンジン音。
振り返らなくても分かる。
「……彰吾」
さっき晴太から言われたことを
思い出すと。
なんだか彰吾が違って見える。
意識してしまう。