初恋の絵本




その後、無言のまま
駅に向かって歩いた。

何一つ言わずに……。




気付いたら駅の改札まで来ていた。














「じゃあ、ここで」

「…待って………」






「君は来ちゃ行けないよ」









とんと、肩を押される。

虚をつかれよろめいた隙に、
晴太が改札を抜けてしまった。
























「さよなら」





















暗い駅の構内に、
晴太の体が吸い込まれ消えた。



追いかけたいけど、
私には切符がない。




ここを通る資格がない。













時間がどんどん過ぎていく。


もう、電車は行ってしまったかな?






















「心実!」















ドキっとした。



背中にバイクのエンジン音。


振り返らなくても分かる。









































「……彰吾」















さっき晴太から言われたことを
思い出すと。

なんだか彰吾が違って見える。


意識してしまう。










< 148 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop