初恋の絵本
今日も学校に行く。
鞄を持って玄関を出ると、
見慣れない女の子が話しかけて来た。
「あの。篠原心実さんですよね?」
「……そうですけど」
「私、高橋芽衣って言います」
「高橋、さん?」
聞いたことないよな。
高橋だなんて。
「芽衣でいいです。あの、私、彰吾と仲いいんです」
見た所、芽衣は中学の制服を着ていた。
なんで中学生が彰吾と仲がいいんだろ?
「ああ。私、彰吾が喧嘩して倒れてるところに居合わせたんですよ」
「彰吾が喧嘩?」
「はい。彰吾、毎日のように喧嘩してますよ。まあ、そのお陰で私も彼に会えるんですけど」
喧嘩の話しをしているのに、
芽衣は嬉しそうに笑った。
「私と彰吾の繋がりなんて、そのくらいしかないですから」
「でも、喧嘩なんて……」
「やめるみたいですよ。ヤクザ」
「え?」
「お父さんと毎日喧嘩してるみたいです。あれ?もしかして知りませんでしたか?」
まだ、中学生なのに。
とても大人びた表情をした芽衣。
「心実さんって、彰吾の彼女じゃないんですか?」
私は彰吾とは付き合ってない。
私がまだ立ち向かえないくらい、
弱いから。
そう心の奥底で思った。