初恋の絵本
そう思っても、声にも顔にも出さず
ふるふると首を振って返事をする。
「やったあ!彼女じゃないんだあ!」
悪気なく嬉しそうに、
芽衣は歓声をあげた。
「芽衣、ちゃん?」
「ああ、よかった。心実さんって美人ですよね?私、焦ったんですよ。やっぱ、写真で見るよりもずっと綺麗ですよねえ」
「写真?」
「彰吾の部屋で見つけました。引き出しにしまってありましたよ。鍵掛けてないなんて、彰吾は甘いなあ」
「勝手に見たの?」
「はい」
悪びれる様子もなく、
芽衣は肯定する。
「だって私、彰吾のこと好きですから」
まだ、中学生なんて子供だ。
なんて思っていたのに。
目の前にいる芽衣は
ちゃんと大人の女の顔をしていた。
「心実さんっ。私と友達になってください」