初恋の絵本
「もおお〜。遅刻した罰にケーキ奢りなさい!」
「断る」
「なによ〜。そんなカッコよく言われたら許さざるおえないじゃない〜‼︎きーっ。悔しい〜!」
彰吾に抱きつく阿久津くん。
多分あれは彼なりのスキンシップ。
ああでもしないと、
警戒心の強い彰吾に触れることは出来ない。
私も。
昔はああやって彰吾に抱きついたものだ。
「やだ!彰吾に触らないで!キモい!」
カン高くて通る声に顔を上げる。
そこには、
昨日会ったばかりの高橋芽衣がいた。
「高橋芽衣ー⁉︎なんであんたがここにいるのよおぉおお!」
「彰吾が出かけようとしてたから。ついて来ちゃった♪
将来の彼女としては、彼氏の交友関係は把握しておかなきゃとおもって」
「誰が彼氏だ」
迷惑そうに、彰吾は芽衣の腕を振り払う。
「あ。心実さん。こんにちは」
「……こんにちは」
「ね。彰吾ったらひどいでしょ⁉︎
こんなに好きって言ってるのに、私のこと相手にしてくれないんですよ」
「アホか。ガキなんて彼女にできるか!」
「だから!彰吾の好みの女になる努力してるでしょ!」
「中学生の時点でアウトだ。法的に」
「恋愛の前に障害はないわ!」
「あるんだよ!」
「そうよ彰くん!障害はないわ!」
「性別的に障害だらけじゃねえか!」
芽衣と阿久津くん。
二人に挟まれながら、
彰吾は盛大なため息をついた。