初恋の絵本
『ハル』…。
「ハルが好き」
その声に思わず顔を上げた。
いつもの休み時間。
授業つまんないなって
欠伸していた私の眠気は吹っ飛んだ。
今の声は誰の声?
ねぼけて私が呟いた?
慌てて周囲を見渡すと、
女の子達が楽しそうにお喋りしていた。
女の子って可愛いよね。
たくさんいると、もっと可愛い。
色にしたらピンク。
形にしたらハート。
小さい頃から一人だった私は、
みんなでいるのが好きだった。
憧れるなあ。
女の子の集団って、可愛くて好き。
「確かにハル、カッコいいよね」
「分かるー。別にイケメン好きってワケじゃないけど、ハルはカッコイイ‼︎」
「サッカーしてる時が一番カッコイイよね〜‼︎」
「顔でしょ?それなら、ウチは青山くんが好きだな」
「青山くんは……綺麗な顔してるけど、怖いからヤダ」
「そこがいいんじゃん。甘めで綺麗な顔してるのに、実は怖い。最強じゃね?」
「でもやっぱ総合的に晴川だよ。青山は、家がアレだし。将来性考えると断然ハル!」
「一年でサッカー部レギュラーだしね」
「あー!マジヤバイ。早く放課後にならないかなあ。練習試合見たいよ〜!」
耳から入ってきた情報を纏める。
ハルっていう名前のサッカー部の男子と彰吾の話だ。
彰吾はモテる。
小学生の時から、ずっと。
私は、近くにいすぎて分からないけど。
黙っていれば、
すごく優しそうな顔をしていると思う。