初恋の絵本



































「待って、心実ちゃん!」





黙って私を見送る彰吾とは対照的に
阿久津くんが追いかけてきた。










「ごめん。まさか彰くんがあの女を連れて来るなんて思わなくて………俺……ほんと、ごめん」

「ううん。楽しかったよ。阿久津くんありがとう」

「心実ちゃん……」









焦っているのか、
口調が言うもどうりの阿久津くん。

私、無理してる阿久津くんより。

こっちの阿久津くんの方が好きだな。









「でも、ごめんね。私帰る。……
あの子、ちょっと苦手なの」

「俺も苦手だよ。なんか嫌だよ。彰くんには合わない」

「合わない……ことはないと思うよ。彰吾、あの子のこと気にってるよ。きっと」

「そうかな?……」

「彰吾にはあれくらいの女の子が丁度いいのかもしれないよ。ああ見えて、彰吾は押しに弱いから」

「それは分かる。俺も押しまくったら友達にしてくれたし」

「そうそう。そういうの」

「…でも……俺は応援できない。
彰くんには心実ちゃんみたいな女の子がいい」

「私みたいなの?ダメだよ。彰吾にはもっといい人がいるよ」

「彰くんだけじゃない。心実ちゃんには…もっと…幸せになって欲しいんだ」





自分でも言ってて辛い。

けど、なぜか言ってしまう。























「ごめん。行くね。ありがとう」






きっと。


彰吾は芽衣を彼女にするだろう。

今じゃなくても。

近い未来。


だって、あの子。



嫌になるくらい。



彰吾の好みなんだもん。




世界で一番、大好きで大切な友達だから、わかるよ。














彰吾。






私、やっぱり。







君のこと、好きだし。大切だよ。





私は君が芽衣を彼女にしたら。





どうするのかな?






本当は渡したくない。







けど、けど……。










涙腺が痛かったけど。

いつもみたいに無視をした。




涙は流れない。











次の瞬間。


無表情の私に戻っていった。


















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