初恋の絵本
Twitter







朝起きて窓を開けると。

雪が降っていた。






「そっか。昨日、寒かったもんねえ」








思い出したように寒いと呟いて、
暖房を入れる。


寒いけど、雪は好きだから。


なんとなく浮足で玄関を開けた。






「心実ちゃん、おはよう」

「あら心実ちゃん。早いのね」

「おばちゃん達、おはようございます」



みんなに挨拶して。
新聞をとる。





「ああそうだ心実ちゃん。ミカン食べない?ミカン。甘いの」

「いります!」

「心実ちゃんは、小さい時からおミカン好きねえ」

















『あら彰吾くん。元気?』

『今日もイケメンねえ。おミカン食べる?おミカン?』

『えっ。はっ、……どうも』

『心実ちゃんにもあげるわね』

『ありがとう、おばちゃん!』




おばちゃんのむいてくれたミカンは、
手の温度が移っていて。

温かい。





『おうわ。このミカン生温かい……』






なんて文句言いながらも。

彰吾はミカンを完食した。






ミカンを見るたびに思い出してしまう。





彰吾との思い出はかけがえのないもの。







あの人はいつだって優しいから。

















〜〜♪

また、携帯がなる。




あ、阿久津くん。















『彰くんが高橋芽衣と付き合うらしい』















やっぱりなって思った。


いつかこうなると予感してた。










< 163 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop