初恋の絵本


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放課後。

妃ちゃん達に連れられて、
サッカーコートまで来ていた。



これから『ハル』に会えるんだ。



「ハルーっ!」



声の泳ぐ。

餌を求めて動く魚の群衆のように。

ざわめいて脈を打つ。

ハルを呼ぶ声が大きくなる。



ハルなんてありふれた名前は
たくさんある。

私の求めているハルは
どこにいるんだろう?



祭りの金魚すくいみたい。

四角いサッカーコートは、
まるで露店の水槽。



その中に、
目立つ金魚が泳いでいる。

私の欲しい子、
いるかなあ?

興味本位で、
コートでプレイする男の子を見た。



「ハルー!頑張れーっ‼︎」

「晴川っ、そこ!」

「いけいえいけ!」



直ぐに分かった。

だって一番目立ってたから。



遠目だけど、
綺麗なものは綺麗。



形がきれい。

群れの中、
元気のいい魚が
すいすい泳いでいる。

あれが欲しいけど。

多分それって
みんな、欲しいよね。



だけど私が欲しいのは、
みんなが欲しいのじゃなくて。

私だけの、
私に与えられるべき、
そんな男の子だから。

どうしよう。

彼が私のハルだったら困る。

とてもじゃないけど、
手に入りそうにない。



「心実!あれ、あれだよ!ほら、今ボール拾ったの!あれがハルだよ!」

「あ。ああ。うん」

「カッコいいよね!」

「うん」



それだけしか言えなくて。

大歓声の中、
ぼんやりハルを見ていた。



嫌だな。

どうか。
彼が私のハルじゃありませんように。








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