初恋の絵本
お隣さん
「なぜスキヤキにカレーを入れた」
炊き立てのご飯にルゥをかけて、
彰吾の前にコトリと置いた。
「それは、昨日の夕飯がスキヤキだったからです」
「なら昨日と同じスキヤキを温め直せばいいだろ⁉︎なんでカレー粉をぶち込むんだよ!」
「スキヤキ飽きたって言ったのは彰吾でしょ!」
「だからって、スキヤキをカレーにするか普通」
「新しいかと思って」
「新しいのを通り越して狂気を感じる」
スプーンで糸こんにゃくを
掬い上げる彰吾。
「食えんのかよ、これ」
「美味しいよ。多分」
「嘘つけ!」
「そもそも、彰吾が悪いんじゃない!お肉買ってきてって頼んだら、松坂牛なんか買ってくる?普通。一般庶民が⁉︎」
「肉と言えば松坂か神戸だろうが!」
「あーもー!これだから金持ちは‼︎」
家計簿を見ながら溜め息をついた。
彰吾は、親から自立したいとかで
今からその準備をしている。
家事全般ができない彰吾に
色々教えてあげるついでに、
夕飯を一緒にすることが多い。
食費は二人で一定の額を出し合って、
そこから切り詰めていた。
「と言うわけで全部食べてね」
「無茶言うなよ!つうか絶対カレー以外なんか手立てあっただろ⁉︎」
「………あったね。丼ものとか肉じゃがとかね。でも冒険したくなるお年頃なの!」
「ふっざけんなよ‼︎」
とか言いつつ、
恐る恐るカレーを一口食べてみる彰吾。