初恋の絵本
遠くだから、分からない。
近くで見ても、
分からないかもしれない。
私の記憶は曖昧で、
判別できる自信もない。
「それって、晴川彼方のことか?」
「うん。そうだよ。なんで知ってるの?」
「晴川とはクラスが一緒だからな」
「え?そうだったんだ」
彰吾と同じクラスってことはA組か。
と言うことは、特進クラス。
勉強できるか、一芸持ちの人の。
でも、なんだ。
隣のクラスだったんだ。
「俺あんま学校行ってねえけど、なんかすげー目立ってるな。アイツ」
「やっぱりそうなんだ……」
なんか余計に気になってきた。
「恋ってなに?」
「は?」
「彰吾はどうして彼女と付き合ってるの?それってやっぱり恋してるからだよね」
恋をしているから恋人。
漢字にするとよく分かる。
恋+人間=恋人。
そのまんまだ。
「彰吾は恋をしているの?」
見つめる私に、
黙ってカレーを食べる彰吾。
不味いって言ったくせに、
完食してしまった。
「ごちそうさん」
「ねえ」
お皿を持って部屋から出ようとする
彰吾を呼び止める。
「私の質問に答えてないよ」
「答えても分からないやつに、話したって仕方ない」
「なにそれ」
「数学だってそうだろ。答え教えても問題の解き方が分からなきゃ意味ねえし」
「?」
「恋してなくても付き合えるし、彼女にする」