初恋の絵本


遠くだから、分からない。

近くで見ても、
分からないかもしれない。

私の記憶は曖昧で、
判別できる自信もない。



「それって、晴川彼方のことか?」

「うん。そうだよ。なんで知ってるの?」

「晴川とはクラスが一緒だからな」

「え?そうだったんだ」



彰吾と同じクラスってことはA組か。

と言うことは、特進クラス。

勉強できるか、一芸持ちの人の。

でも、なんだ。

隣のクラスだったんだ。



「俺あんま学校行ってねえけど、なんかすげー目立ってるな。アイツ」

「やっぱりそうなんだ……」

なんか余計に気になってきた。



「恋ってなに?」

「は?」

「彰吾はどうして彼女と付き合ってるの?それってやっぱり恋してるからだよね」



恋をしているから恋人。

漢字にするとよく分かる。

恋+人間=恋人。

そのまんまだ。



「彰吾は恋をしているの?」



見つめる私に、
黙ってカレーを食べる彰吾。

不味いって言ったくせに、
完食してしまった。



「ごちそうさん」

「ねえ」



お皿を持って部屋から出ようとする
彰吾を呼び止める。



「私の質問に答えてないよ」

「答えても分からないやつに、話したって仕方ない」

「なにそれ」

「数学だってそうだろ。答え教えても問題の解き方が分からなきゃ意味ねえし」

「?」

「恋してなくても付き合えるし、彼女にする」




< 22 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop