初恋の絵本



苦い薬を飲んだ時みたいな表情の彰吾は
大人みたいなことを言う。



「おかしいよ。恋してなかったら付き合えなくない?」

「付き合えるんだよ」

「え?え?」

「好きじゃなくても結婚できるのと同じだよ」

「そんなの。江戸時代とかの話じゃなくて?」

「できるんだよ」

「………?」



好きじゃなかったら無理じゃない?

私がおかしいの?



「分かった。なにか事情があるとか?」

「そうじゃなくても、付き合える」



あ。ダメだ。

理解不能だ。

テストで分からない問題が
出て来た時と同じ。

真っ白になって、
でも頑張って書かなきゃって思って。

考えたって出ない答えを探して、
空欄を埋めなければならない状況。



「……難しい」





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