初恋の絵本
「恋したことねえヤツは、考えるだけ無駄だ。諦めろ」
「彰吾だって恋してないじゃん」
「してるよ」
「嘘だ。彼女にしてないって言ったよ」
「彼女に恋してないからな」
「わけ分かんない。じゃあどうしたら恋ができるの?」
「そんなん、無理矢理するもんじゃねえし」
「でも恋したい」
「勝手にしろ」
キッチンのドアを荒々しく閉められる。
奥から、水の流れる音がする。
彰吾は料理はできないけど、
洗い物は全部してくれる。
「…勝手にするもん」
なによ。
自分だけ大人みたいな態度してヤダ。
同じ年のくせに。
機嫌が悪くなったら、
彰吾は一日なにも話さない。
友達だから、よく分かる。
でもなんであんなに
怒ったんだろう?
「彰吾がなに考えてるかわからないから帰るね」
そう呟いて、家に帰ることにした。