初恋の絵本
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「彰吾さんに朗報です」
昨日あんな感じで帰ったけれど、
いつもみたいに彰吾の部屋を訪ねた。
まあ。ケンカはよくするし。
なかったことにして会いにいけば、
大体元に戻ってる。
「なにが」
「カレー」
「またかよ。ふざけんなよ。鍋いっぱい作りやがって。お陰で朝食も昼飯もカレーだ」
「いいじゃない。美味しいよねカレー」
「美味かったらな!」
よかった。
いつもの彰吾だ。
キッチンを確認すれば、
カレーが半分や減っていた。
「このカレーを、美味しく食べる方法を教えに来ました」
「ねーよ」
「あるよ」
「ねえし!パンに塗ってもパスタに入れても不味かったし!」
「おお。頑張ったね」
「誰のせいだ」
拳でギリギリとこめかみを
締めつけられる。
けっこう痛い。
「いたたたたたた」
「思い知れ」
「ごめん。ホントに美味しくなるから」
「本当だろうな?」
はい、
とスーパーの袋を見せると、
拘束から解放してくれた。
「なんだこれ」
「うどんです」
「まさか入れる気かよ!そんなんで美味しくなるかボケ‼︎」
「なるんだって、これが」
がさごそと袋から
うどんの玉を二つ出した。
「はいこれ茹でて」
「おう」
「そんでカレーを出汁でといて」
「おう」
「出来上がり」
「簡単すぎだろテメエ!」
一瞬でできた今晩のご飯は
カレーうどん。
納得がいかないらしい彰吾は
どんぶりに箸を付けない。
仕方ないから私だけ食べる。