初恋の絵本
「あ。美味しい!高いお肉入ってるだけある‼︎」
「俺は騙されないぞ」
「いやいや。ホントに美味しいし!」
余りに私が夢中でズルズル
食べていたせいだろうか。
つられて彰吾も口をつける。
「……美味い!」
「でしょ?」
「ああ。そうか。和食屋のカレー美味いもんな」
「そうそう」
「なるほど。これは合う。つか好きな味だ」
「よかったあ」
「うん。全部食えるくらい美味い」
夢中でカレーうどんを食べてくれる
彰吾に微笑ましくなる。
「そして、ここで残念なお知らせがあります」
「なんだよ。どうした」
「カレーのストックがつきました」
「は、はああ⁉︎」
「だって。まさかこんなに頑張ってカレー食べてくれたとは思ってなかったんだもん」
「もっと早く言えよ!」
「気が付いたのが今日の夕方だったから」
はあ、と。
肩を落とした彰吾は、
カレーうどんを二回お代わりしていて。
鍋いっぱいだったカレーを
完食してしまった。
コンビニで買った来た
イチゴプリンを食べつつ、
一応報告しておく。
「あのね。今日もハルの試合見てきたの」
「ほお」
「でも、やっぱり私のハルかどうか分からなかった」
「つかもうそれ別人じゃねえの?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
「………」
「もうちょっと通おうかなって思ってる」
「……そうか」
「彰吾の言う、恋 かどうか。ちゃんと確かめたい」
黙ってしまった彰吾。
子供っぽい私に
呆れてしまったかもしれない。
だけど、知りたいんだ。
ハルのこと。
恋のこと。
もっといっぱい知りたい。
みんなが知ってること、
私も知りたい。
私も大人になりたい。
意地になってるだけかもしれないけど。
放課後見た、ハルを思い出した。
もう一度見たい。
もっと見たい。
あのハルは。
私の「ハル」なんだろうか?