初恋の絵本
「ごめんなさい!」
「え?」
「私、邪魔だった?」
「そ、そんなことはない!全然ないっ!」
「は、はあ」
「……その…、なんか、気になって…」
ハルの顔がみるみる赤くなっていく。
「試合してたら、いつも見に来てくれるなって。誰だろって。めっちゃ気になってた。知り合いでもないから」
「……もしかして、気が散っちゃった?」
「全然!むしろ、その逆!見に来てくれると、余計頑張ろうって思えた!」
「そ、そうなんだ」
「……あのさ。今日も試合あるから」
「うん」
「よかったら、また来て!」
「うん!」
それだけ言うと、
ハルはやっと笑ってくれた。
「うわ〜。緊張した!」
緊張したのは私の方だよ。
なんて言うこともできなくて、
ハルは風のように去って行ってしまった。
「今日の試合、かあ」
もちろん、言われなくても
見に行くつもりでいた。
あれは私のハルだろうか?
まだ確かめられてないから。
「……う〜ん」
まさか本人から直接誘われるとは
思いもしなかった。
っていうか。
笑うんだ。話すんだ。呼吸するんだ。
人間だから当たり前なんだけど。
彼の場合、
私と違う生物なのかと勝手に
勘違いしていた。
だって。
サッカーの試合見てるけど、
すごいシュートしたり。
ルールのわからない私でも
すごいって感じられるんだもん。
別世界の人だって無意識に感じていたから、尚更。
みんなと同じ制服を着て、
廊下を走っている。