初恋の絵本


「なにこれ」

緊張に似たドキドキ。

恥ずかしい時に赤くなる
頬の感覚。

あと、なんか嬉しいのと照れ臭いのと。



なんか、矛盾してない?



なにこれ、なにこれ。

ワケ分かんない。



そんな自分が初めてだったのと、
放課後、ハルの試合に行くのが
少し怖くなった。

見たいけど、見たくない。

ハルに会いたいけど、
いつもみたいに堂々とも見れない。



でも見に来て欲しいって言ってた。

私が行かなかったら
どうなるんだろう。



ガッカリするかな?

それとも、怒る?

哀しくなる?



私だったら、来てくれないと
心配になるかな。

それなら、ハルに心配かけたかない。



「……行くかあ」

気がついたら。

机に伏せって、ジタバタしていた私を見て、妃ちゃん達が笑っていた。



「心実。さっきから面白い〜」

「あはは!ニヤニヤしたり、不機嫌になったり。泣きそうになったり。笑ったり。変なの‼︎」



そうなんだ。

ヘンなのは、
ハルじゃなくて私なんだ。



こんな感覚知らない。

初めてだ。



「……なにこれ」



なにこれ。

ばっかり呟いている自分。

自問自答しても分からないものは
わからない。



ただ。気を抜くと、
私の頭はさっきのハルの笑顔が
連続再生されて。

あの笑顔を思い描くだけで、
また心臓がドキドキして
頬が、赤くなった。



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