初恋の絵本
もしもまた。
昔みたいに戻れるのなら。
私は私の家族が欲しい。
料理して、笑って、みんなでテレビ見て。
そんな楽しさが当たり前な。
そう考えたら。
彰吾は家族みたいだ。
私にとって特別で大事な存在。
こんな友達は彰吾しかいない。
「彰吾。家族を作るなら、せめて目玉焼きくらいは作れるようになってね」
「はあ?目玉焼きくらい作れ……」
「いつまでも、私が料理してたら彰吾の王国が建国できないでしょ」
「……じゃあ、ずっと建国できないかもな」
「そんなんじゃダメだよ。彰吾は一人暮らしするんでしょ?料理はできないとしんどいよ」
私は料理が出来なかった。
コンビニ弁当や出来合いのお惣菜も
美味しいけれど。
覚えていたのは、お母さんの味だけ。
レシピなんか分からないから、
いっぱい失敗したけど。
今ではなんとか料理ができるように
なった。
料理をしていると幸せな気分になる。
でも、美味しいのができた時。
誰か傍にいてくれないかなあって思う。
美味しいのに悲しくなる。
だから、彰吾に料理を教えて欲しい
って言われた時は嬉しかった。
自分の居場所を与えてもらった気がした。