初恋の絵本
そこには、笑顔のハルが立っていた。
「えと、あのな」
「………」
「……その」
ビックリしすぎて返事ができない私に感化されたのか、
ハルもしどろもどろになってしまった。
「……と、試合見に来てくれてありがとう。これ……」
「……アンパン?」
「こ、こないだ!美味そうに食べてたから…あの、好きかなって思って……」
「好き……」
突然、ハルからアンパンを渡された。
それから、カーッと沸騰したみたいに
顔が赤くなった。
アンパン。
……うわ……恥ずかしい!
あの時、見られてたんだ。
「もしかして、そんなに好きじゃなかった⁉︎」
「ううん。好きだよ!」
「俺も、好きだ」
「「……………」」
「「アンパンのことだから!」」
「「……………」」
好きって、
そういう意味じゃないのに。
分かってるのに、
なんで顔が赤くなるんだろう。
なぜだかハルも真っ赤になっている。
なんなの、この状況。
「あ、じゃあ俺行くから!」
「あの、」
慌てて立ち去ろうとするハルを、
思わず呼び止める。
「よかったら、一緒にたべない?」
もらったアンパンを手で割って、
片方の大きい方をハルに渡す。
「えええ。あ、ありがとう」
「私こそありがとう。アンパン好きだから、嬉しい」
「………そっかぁ。そうかー!」
ハルは床にぺたんと腰を下ろした。
「私も!」
スカートを気にしつつ、
ハルの隣に座る。
「あのね。これ購買のアンパンだよね」
「よく分かったな」
「私ね。こしあんが好きなの。あそこの購買のアンパン、こしあんだから大好きなの」
「俺も!粒あん苦手」
「同じだ〜。なんかね、粒なのか粒じゃないのかはっきりして!って感じ」
「ぷ。なんだそれー!でも分かる」
アンパンを分けっこして、
食べながら笑う。
さっきまでガチガチだったのが嘘みたい。
美味しいし、楽しい。