初恋の絵本
「えと、心実はどこ中?」
私、ハルに名前教えたことあったかな?
なんで知ってるんだろう。
でも、私だって教えてもらってないのに
ハルの名前知ってるし。
こんなもんなんだろう。
「青葉第二中」
「俺、西区」
「西区なんだあ。あそこの校舎キレイだよね」
「青葉第二だっていいじゃん。冷房ついてるんだろ?」
「西区って冷房なかったの?」
「ないない。夏とか死にそうだった」
「あんなに校舎新しいのに?」
ハルは西区出身なんだ。
地元にいないタイプだから、
なんか納得する。
「高校っておもしれぇな」
「え?」
「今まではさ、知ってるメンツばかりだけど、高校って色んな奴がいるよな」
「ああ。確かに」
「サッカー部なんて県外の奴もいるぜ」
「県外⁉︎なんでわざわざ?」
「スポーツ特待生って知らない?ウチの高校、運動部強いし」
「……なるほど」
「実は俺もそれで来たんだ」
「そっか…ってえー。すごいっ」
そうだよね。特進クラスだしね。
サッカー、楽しそうに。
でも、誰にも譲れない気迫で毎日
やってるよね。
「心実はなんで、音駒西校にしたんだ?青葉第二なら、ちょい遠くねえ?」
「……偏差値がね」
「偏差値か」
「勉強嫌いなの」
「あー。俺と同じだな」
二カッと笑うハルにつられて、
私も自然と笑顔になった。