初恋の絵本


次の日も、ハルはいた。

アンパンと牛乳を持って。

「あー。私も牛乳持ってきたのに」

「すげえな。牛乳瓶かよ」

「お風呂屋さんみたいだよね。ハルは紙パックだ」

「おう。ちゃんと三角のやつだぜ」

それぞれの牛乳へのこだわりに
わらっしまう。

「4つも牛乳どうしよう」

「俺が3つ飲むからいいだろ」

「なら、俺が2つ飲むよ」

「「?」」



聞きなれない声に、
ハルと同時に振り向いた。



「翔(かける)⁉︎」

「お前さあ、最近、昼練サボってるだろ。怒ってたぞ、先輩」

「なんでお昼休みも練習しなきゃなんねえんだよ。そんなん、下手くそなヤツだけやってればいいじゃん」

「そういうワケにもいかないんだよ。俺ら1年だし。大体、ハルなんて試合に出してもらえてるだけでも有難いと思えよな」

「俺、3年より強えし」

「ハル!その態度がみんなに反感買ってるんだって」



この人、どこかで見たことある。

どこだっけ。思い出せない。



じっと見ている自分に気がついたのか、
その彼は私を見て笑った。

「でもまあ。こんなに可愛い子と会ってたら、練習なんかする気失せるよね」

「翔!」

「あはは。ごめん。でも噂通り可愛いね。可愛いっていうか、キレイ?」

「おっお前。よく本人を前にして、そんなこと言えるよな」

「だって、本当のことだし。ハルだって言ってたじゃん。ササハラココミは可愛いって」

「ばっ!」



まただ。

私の名前。

なんで知らない人が知ってるんだろう。




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