初恋の絵本
「えっと。こいつ。友達。同じ中学で、同じサッカー部」
「栗山翔っす!」
「名乗るな」
「なんでさ」
「帰れ!」
ああ。
どこかで見たことあると思ったら。
サッカー部の練習だ。
ハルと二人一組で。
ストレッチとかパス練とか、
ハルといつもペア組んでる男子だ。
「もういい。分かったから行くぞ」
「心実ちゃんごめんね〜。ハル借りてくね〜」
「だから!気安く呼ぶなって!」
「なんで?ハルだって心実ちゃんのこと名前で呼んでたじゃん」
「俺はいいんだよ!」
「彼氏でもないのに?」
「うっせーよ!黙って練習行くぞ‼︎」
「はいはい」
翔くんの肩を掴み、
階段を下りて行くハル。
チラッと振り返った時、
私にだけ分かるように。
『また明日』
って。
無言の唇が告げていた。