初恋の絵本


「誰よアンタ」

「は、はい…?私?」

「もしかして、アンタが彰吾の新しい彼女⁉︎」

「え?彼女っ⁉︎」

「やっぱり……!」



女の人は私を突き飛ばすと、
部屋の中に入って行った。



「彰吾!」

「美里?」

「なんで携帯に出ないのよ‼︎私は彼女でしょ!」

「はあ?別れたのに何言ってんだ。つか、なんでここに入って来てる。誰が手引きした?」

「そんなの、どうだっていいでしょ⁉︎」

「あー。分かった。正也さんだな。店にいた時からお前のこと気に入ったってうるさかったから」

「正也は関係ない!」

「関係ねえかどうかは本人に聞くから。あの人、口軽いし」

「別に誰だっていいじゃない!私は彰吾と話したかったの‼︎」

「俺は別に話したくない」

「私は話したいことだらけよ‼︎」


部屋の奥から、さっきの女の人の
ヒステリックな声がする。

別に、立ち聞きする趣味はないし。

こうゆうときは、
黙って帰った方が良さそうだ。



だけど。



困ったことに、
鞄を取りに戻らなければ帰れなかった。

あと、ハンバーガーも。



お腹が空いてるけど、
ハンバーガーは仕方ないとして。

鞄を残して行くのは非常に困る。

携帯も鍵も財布もあの中だ。



仕方なく部屋の中を覗き込む。

見れば、相変わらず無表情の彰吾と、
床に潰れ泣いている女の人がいた。



「好きなのぉ。別れたくないよぉ…」

「はあ?意味分かんねーし。年下の俺とは遊びだって割り切ってたんじゃねえのかよ」

「それはぁ、年上の意地なのよぉ…!本当は好きなの!真剣に好きなの!」

「カッコ悪っ。俺、そういうのダメだわ」

「彰吾ぉ…」

「いいから、早く帰れよ」

「ううっ……」

「うっわ。泣くとか、ないわー。鬱陶しい。年上の女が泣くとかよ」

「……だってぇ…」

「お前みたいな女、生理的に無理」




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