初恋の絵本


「彼女だ」

「へ?」



どうやったら、この人に彼女じゃないって信じてもらえるか考えてたら。

彰吾が、あり得ないことを口にした。



「コイツは俺の彼女だ」

「違っ!」

「ほら、やっぱりぃ!彼女だったんだ。京介の言ってた通りじゃないっ!」



悲鳴みたいな金切り声を聞いて、
心が壊れそう。



「好き」なのに
「嫌い」って叫んでるみたい。



「彰吾を返せっ!」

返したくても、返せない。

そもそも彰吾の心を、
あなたは手にしていたの?

彰吾の「好き」の行き先を知らない
私にはどうすることも出来ない。



彼女じゃないのに、
私のことを「彼女」と言った
彰吾も理解不能。



好きは優しい気持ちになるワケじゃないのかな。

それは彰吾が本当の好きじゃなかったから?



彰吾が私を腕の中に庇う。



息ができない。

苦しい。

まるで、きつく抱きしめられたみたい。



「こんなの、よくないよ」

嫌がって叫んでも話してくれない。



「本当に好きじゃなきゃ、みんな哀しくなるよ」



ほら。

彰吾が私を抱き締めるから、
またあの人が傷ついた。



彰吾も同じだ。

ハルと同じ。



繋がってたいって思う女の子が多いから。

絡まる。



赤い糸があるなら。

彰吾とハルに向けられて、
ぐちゃぐちゃに絡まっている。

そしたら、私の赤い糸は
どこに繋がっているのだろうか。



私には見えない。



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