初恋の絵本



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「珍しいね」

「なにが?」

「青山くんが登校してる」



普段、彰吾のこと怖いと言っていた
女の子達が、
休み時間の度A組のとこに
行っていた。




「篠原さーん」

妃ちゃんと茉桜ちゃんと話していたら、
誰かに自分の名前を呼ばれた。

「心実。呼ばれてるよ」

「誰かな?」

「青山くんが来てるみたい。背が高いから目立つね」

「ホントだ。何の用だろ」



慌てて、教室から出る。

出入り口に、
制服姿の彰吾が立っていた。

みんなと同じ制服をきている彰吾に
少しだけ違和感。



「どうしたの?」

「昼。一緒に食べないか」

「いいけど。珍しいね。彰吾が学校に来るなんて」

どこで食べる?

と聞いたら彰吾に、
どこでもいいよと言われた。

もうこの時点で
すごく目立ってたし。

みんなが私たちに聞き耳立ててるのも
直ぐに分かった。

注目されるのを嫌ってる
彰吾らしくない。



「お前、制服の着崩しすげえな」

「そう?」

学食で、うどんを食べながら彰吾が
つぶやいた。



まあ、確かに
制服の着こなしに色々うるさい学校だけど。

そんなの気にせず、
指定外のネクタイを緩く結び、
耳にはピアス。
ブラウスのボタンは二つ目まで外す。
カーディガンは腰にまいてある。

でも、案外普通なんじゃ?
とも思ったりもしていた。



「なんかいかにもバカですみてえ」

「なにそれ、だいたいね。彰吾はね。すごく成績が良かったのに、なんでここに来たの?最初っから北高受ければよかったじゃない」

「うるせーな」

不機嫌そうにうどんを食べる彰吾に
視線が集まる。



入学式から彰吾は目立っていた。

あまり目立ちたくないとかで
極力学校に来なくなった彰吾。



それなのに、学校に通うなんて。

急にどうしたんだろう。




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