初恋の絵本
昼休みも後半。
うどんを食べ終わった私は、
学食を後にする。
「それじゃ彰吾。午後の授業も頑張ろうね」
「心実。昼休みまだ時間あるだろ。どこ行くんだ?」
「え?」
トレイを片してくれた彰吾に尋ねられる。
「べ、別に。どこにってワケじゃないけど……」
「ならまだ一緒にいようぜ」
「うん…だけど、ここは。……みんな見てるし、落ち着かないよ」
「そうだな。なら、場所変えるか」
チラリと腕時計を見る。
ハルがまってるだろう、
あの廊下のことをかんがえた。
「場所ねえし、めんどくせーし、外出るか」
「学校来た意味なくなるよ」
「それもそうだな」
適当にあるく彰吾に、
なんとなくついて行く。
「もういいじゃない。放課後、彰吾の部屋で話せば」
ハル、待ってるのかな。
行けそうにないって、
ハルに伝えたいけど。
今更、彼の携帯の番号もメアドも
聞いてないことに気がついた。
「ダメだ。昼休みは昼休み。放課後は放課後だ」
「なにそれ」
「たまにはいいじゃねえか」
やっと振り向いてくれた彰吾は、
なんとも言えない顔で微笑んだ。
普段の廊下、階段。窓。
いつもと同じ、学校の中。
そして、彰吾。
中学の時と、変わらない風景。
でも、違う。なにかが足らない。
そく考えていると。
随分高い場所まで来てしまった。
私は、ハルといた
一階の隅っこの方が落ち着く。
そこに行きたい。
「心実?」
「私、行かなきゃ」
「どこへだ?」
「待ち合わせ。してたんだった」
とにかく行かなければ。
とにかくその意思を伝える。
そして、彰吾が、何か言おうとしたけど。
その彰吾の、言葉を振り切って、
私はハルが待つ一階を目指した。