初恋の絵本




「ハル!」

「あ。心実」



私を見た瞬間。

怒るとか不機嫌とか。

そんな嫌な顔一つせずに、
ただ嬉しそうに笑った。



「来ないかと思った」



行くよ。

絶対に。

そう心の中で言った。



「待たせて、ごめんね」

「いや。俺が勝手に待ってただけだし」

「……」

「今日は来ないかと思ってたから。来てくれてビックリした」

「そんなこと…」




「あのさ…青山って、心実とどういう関係?」



「……それって、彰吾のこと?」

「そう。俺のクラスの青山彰吾」


ハルが彰吾のことを聞いてきた。



「仲がいいって聞いてたけど、あそこまで仲がいいとか思わなかった」

「………」

「青山って心実の彼氏とか?」

「違うよ。友達だよ」

「そっか」

呟いたと同時に、
ハルがしゃがみこんだ。



「大丈夫?」

「………は〜。うん。つか、安心した……」

「なにが?」

まだ顔を上げないハルが心配になる。

「俺。心実のこと好きだから。心実の彼氏になりたいって、ずっと思ってたから」

拗ねたようにつぶやくハルは
わざと目を合わしてはくれなかった。

「え…」

「どうしたら俺と付き合ってくれるかなって。言えばよかったのに……なんか
ずっと言い出せなくて」

「………」

「今日学校来たら。心実と青山が仲よすぎだったから。すげービビった」

そう言うと遠慮がちに私を見つめた。



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