初恋の絵本
「なんだよ翔かよ。練習なら行かねえぞ」
「いや練習来いよ。でも練習で呼びに来たんじゃないけど」
「練習じゃないならなんだよ?」
「メール見た?」
「は?なんのメールだよ。そっこー飯食ってここ来たから見てねえわ」
「だろうね。ハル、すごい速さで出てったもんな」
「見てたのかよ」
「うん。どんだけ心実ちゃんに会いたいんだよって」
「うるせえ‼︎」
翔くんの頭を軽くつっつくハル。
心なしか、少し顔が赤い。
「でもそんなことだろうから知らせに来たんだ」
そう言って翔くんが自分のケータイをハルに見せた。
「なんだ?琥珀からじゃねえか」
「そうだよ。琥珀が今日ウチの高校に来るんだって」
「懐かしいな。最近琥珀と遊んでないし」
「なんでそんな淡々としてんだよ!中学の卒業式のこと忘れたの?」
「なんかあったか?」
「琥珀にコクられただろ⁉︎」
翔くんがハルに向かって叫ぶ。
その後、ハッと我に返って
私の方をみた。
「あ。えと……琥珀ってのは、俺らの中学の時の後輩で」
「そういやコクられたな」
「ハル!」
キョトンとしたハルが、
翔くんの慌てぶりに
不思議そうな顔をした。
「なんだよ、あんなの妹みたいなもんだろ」
「……そうかなあ」
「琥珀だってわかってくれだぜ?考えすぎだろ、お前は」
「でも…」
「分かった分かって。放課後琥珀が来るんだろ。りょーかい」
何か言いたげな翔くんに絡むのをやめて
私の方に視線を戻したハル。
「心実。メアドの件だけど」
「おしえない」
「え?」
「教えてあげない」