初恋の絵本
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眠い午後の授業が過ぎ、
放課後になった。
行きたいような、
いきたくないような。
そんな気持ちで、
グラウンドに向かった。
最近分からなくなってきた。
私なんでハルの試合を
観に行くのだろうって。
サッカーは好きじゃない。
ハルは好きだけど、
サッカー観戦に興味はない。
前はただハルが見たかったから。
でも、自分の彼氏になって
ハッキリした。
みんなに人気のあるハルより
私は私のことが好きなハルに
恋をした。
好きだとは思ってなかった時は。
ハルが他の子にキャーキャー
言われても平気だった。
だけど、今は平気じゃない。
ハルへの歓声が、
私の胸に突き刺さる。
「なんかさ。最近、楽しそうじゃないね」
「え?」
私の隣に座っている妃ちゃんが呟いた。
そして茉桜ちゃんも。
「心実。前は夢中で試合見てたじゃない」
「そうかな」
「そうだよ」
フェンス越しに、
ハルのプレーを何となく見る。
「こんな見辛い場所じゃなくて、見るならもっと前に行けばいいのに」
「ん。でも、ここがいいんだ」
「心実がいいなら、いいけど」
遠くで見たいと言う私に、
妃ちゃん達は付き合ってくれた。
「せっかくハルの彼女になれたのに。もっと堂々としなよ」
「いいんじゃない?控えめなトコが心実らしくて可愛いなあと私は思うよう」
「ねえねえ!ハルのファンの顔見たあ?」
「見た見た!ちょー悔しそうな感じ!うけるよねえ。心実が彼女って知ったら黙るし」
「心実だったら文句言えないって」
みんながケラケラ話してる間も
私はぼーっと試合を見てた。
「心実!」
気づくと、試合は終わっていて。
フェンスの向こうから
ハルが手を振っていた。
こんな時。普通の女の子なら
どう思うのかな?
大勢の前ではやめて欲しいな。
付き合う前なら嬉しかったのに。
この感情はなんだろう?
反応しない私に、
ハルがこちらに走ってきた。
「心実。どーした?」
「ううん。なんでもない。試合、勝ったね」
「当たり前だろ」
ジャージの胸元をたくし上げて
汗を拭きながら、
太陽の下でとびきりの笑顔を浮かべた。
やっぱりハル、
かっこいいなぁと思う。