初恋の絵本
「だってだって、約束したじゃん!あの時は断られたけど、琥珀が中学卒業したらもう一度考えてくれるって!」
「言ったけど」
「ほらぁ!」
勝ち誇ったような
笑顔になる琥珀ちゃん。
「やっぱ、あの時と今は違うし。心実は俺が初めて好きになった女の子だし」
「………」
「ごめんな」
ポンポンと。
ハルは琥珀ちゃんの頭を撫でた。
私、ハルにそんな優しい
そんなことされたことないのに。
「やだ。そんなの許さない…認めない‼︎こんな女のどこがいいの⁉︎琥珀の方が可愛いし!琥珀を彼女にした方が絶対いいよ‼︎」
「は?それマジで言ってんの?」
「心実より可愛いとか。、ないない」
「流石、中学生。現実見れてない」
「痛いよね〜。でもうちも自分のこと可愛いって勘違いしてたことある〜。小学生の時だけど!」
「中学生で勘違いとか、手遅れ?」
クスクスと笑いながら
琥珀ちゃんを見て笑った。
「琥珀は可愛いもんっ!みんな可愛いって言ってくれるんっ‼︎」
ヤケになったかのように
声を上げる琥珀ちゃん。
「みんなって何人?誰?100人?」
「…と、友達とか……あと、パパとママとか……」
「パパとママかよ‼︎」
「自分と身内だけが、可愛いって思ってるならただの自己満だから!」
「やめなよ。相手中学生だよ。いじめちゃだめだろ!あはは」
「そんだよね〜ごめんね〜」
「なんでそんなこと言うの⁉︎琥珀、その人より絶対可愛いよ‼︎」
「あーあ。晴川。この子にホントのこと言ってあげなよ」
女子に囲まれたハルは、
しかめっ面でみんなを睨んでる。
そして喚き散らす琥珀ちゃんの
肩にそっと手を置いた。
守るように、庇うように。
幼さが残る琥珀ちゃんを、
ハルは無言で腕の中に閉じ込めた。
「お前ら。琥珀はなあ……」
「可愛いって思ってたらなにが悪いの?」