初恋の絵本
「心実?」
ハルの言葉を遮った私に、
みんなが注目した。
「自分のこと可愛いって思ってたらいけない?」
楽しい会話、みんな大好きな仲間。
だけど、今は嫌い。
意地悪をしている人間は、
みんなそっくりな顔になる。
「どうしたの、心実。琥珀ちゃんのことだよ?心実じゃないよ」
「心実は可愛いから大丈夫だよ」
「ううん。そうじゃなくて」
『心実は可愛い』
いつかの声が。
懐かしい、あの声が。
『心実は可愛い可愛い、お母さんの娘よ』
優しく穏やかな声が。
私だけに響く。
自分のこと、
可愛いなんて思ってない。
でも、可愛いって言われて
嬉しかった。
大好きな人から言われた可愛いは
特別だ。
あの言葉に、きっと嘘はない。
「女の子はね。みんなね。可愛いよ」
ぎゅっと、
目の前の友達の手を握った。
「本当だよ」
だって私知ってるよ。
いつも教室でまんなのことを見てたから。
可愛いなって、
毎日思ってるよ。
「……心実」
さっきまで仮面をつけてたように
同じ顔してたのに。
でも、やっと笑ってくれた。
「心実に言われたらね〜」
「悪い気しないよね。嬉しいね」
「やめてよ照れるわー!」
「だって、みんな可愛いもん」
「あははは!心実が一番可愛いくせに」
うん。よかった。
いつものみんなに戻った。
女の子の可愛い集団。
見てるだけで私を幸せにしてくれる
大好きな友達。