初恋の絵本
「あー!やば〜い!もうこんな時間だあ」
「うっそ。バスの時間すぎてる!」
「私も。ごめん。帰るわ」
「またね!」
「バイバイ」
気づけばもう太陽も落ちそうだった。
バスや電車の時間があるからと
みんなが帰っていった。
残ったのは
私とハルと琥珀ちゃん。
それに、いつの間にか翔くんが
すぐ近くに立っていた。
「……帰ろっか」
帰るあてなんかないのに、
ハルに聞いてみた。
家には誰もいない。
あれから彰吾は部屋に入れてくれない。
「そうだな。俺も着替えてコイツ送るわ」
「………」
ハルの腕から離れない琥珀ちゃん。
彼を渡さないと必死にしがみついている。
そんなことしなくても、
ハルをあなたからは取らないよ。
それに。
ハルはあなたと帰るそうだから。
仕方ない。
「ハル。琥珀は俺が送ってくから、お前は心実ちゃんと……」
「翔は黙ってて!琥珀はハルに送ってもらうの‼︎」
あなたなんて大っ嫌い。
そんな眼差しで琥珀は
私を睨む。
「琥珀。心実にお礼しろ」
「えー‼︎なんでえ?」
「さっき助けてもらったろ」
ほら、と。ハルが無理矢理琥珀ちゃんをこちらに向かせた。
「助けてなんてもらってないし!むしろコイツの仲間に酷いこと言われたし!謝ってよ!琥珀に謝れ‼︎」
この子、何様のつもり?
ってすごい思う。
けど、これ以上関わりたくないのは
確かだった。
だから、仕方なく謝ろうとした。
「………ごめんね。あのね、でも、みんな悪い人じゃないんだよ。普段はすごく優しくていい友達…」
「嘘ばっかり!あのねえ。琥珀のこと可愛くないって言ってるけど、お前らみんなブスばっかだったからね‼︎ブスの連中の中にいる、あんたもブスだからね!」
「心実は可愛い」
ハルが軽く琥珀ちゃんの頭を叩いた。
「痛っ!」
「ほら。送ってやるから行くぞ」
「〜〜〜〜〜」
ハルと一緒に渋々歩き出した琥珀ちゃんは、まだ言い足りなさそうに
こちらをチラチラ見ながら
去っていった。