初恋の絵本



「……ごめんね」



「え?」

隣から翔くんがあやまってきた。





「琥珀。すげえワガママだろ?アイツ、俺らが中学の時のサッカー部のマネージャーやってたんだ。ハル目当てで」

「マネージャー……」

「マネージャーっつっても全く仕事してなかったけどな。掃除とか洗濯とかキツイことは他のマネにやらせて、自分はハルと喋ってばかりだったから。俺らが3年になって部活辞めた途端、琥珀も辞めたし」




純粋にすごいなって思った。

琥珀ちゃんは、ハルが好きなんだ。

ただ、それだけ。まっすぐに。



ハル以外の人間にどう思われても
構わない。

嫌われても関係ない。

ハルが好き。大好き。

多分、それだけ。




私、そこまで誰かを
好きになれるだろうか?

ハルのこと、
琥珀ちゃんくらいに好きになれてるかなあ。



「翔くん」

「ん?」



自分より少し高い翔くんの背丈。

背の高いハルと違って
親近感を覚える。




「私。ちゃんとハルの彼女かな。自信ないよ」

「……心実ちゃんはハルの彼女だよ。心実ちゃんが嫌がっても、その倍くらいハルが好きだから大丈夫」

「あはは。そうかな?」

「うん。ベタ惚れ。あんなハル初めてだよ。俺様なハルらしくないし、見てて面白い」

「そっか……」

「すごく好きなんだなって、分かる」



そう言われると嬉しい。

ハルが私を好きでいてくれてる。

そんなハルが好きだと私も思う。





だけど、ちょっと彰吾のことを思い出した。





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